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ShogoHirasawa authored Jan 4, 2024
1 parent 084a53b commit d72537f
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###1.1本研究の背景

近年,自然災害が多発するなかで,市民の避難を適切にかつ安全に実施することは極めて重要な点である.特に洪水災害においては,2005年の水防法改正により浸水想定区域の指定を受けた市町村は市民に対して,洪水予測の公表が義務付けられた.また,2005年から2009年に洪水ハザードマップ作成に対する国庫補助制度が策定されたことを契機にハザードマップの普及は進んだ(榎村,2012).各自治体のWebページにおいてpdfデータでハザードマップの提供,自治体が主導となり各世帯への紙のハザードマップの配布のみならず,国土地理院が国土交通省水管理・国土保全局と協力して提供する「国土交通省ハザードマップポータルサイト」をはじめとしたWeb上でインタラクティブに災害情報を伝えるハザードマップも存在する(泉谷,2020).Web媒体でハザードマップの閲覧が可能になることで,広域を網羅したハザードマップの作成,各レイヤ情報の表示・非表示が可能となり,多くの情報を盛り込んでもインターフェイスが雑多で見づらくならない,ピンチイン・アウトが可能となり詳細な地図情報を表示できるようになる等のpdf,紙媒体でのハザードマップの表現の限界を克服している.
近年,自然災害が多発するなかで,市民の避難を適切にかつ安全に実施することは極めて重要な点である.特に洪水災害においては,2005年の水防法改正により浸水想定区域の指定を受けた市町村は市民に対して,洪水予測の公表が義務付けられた.また,2005年から2009年に洪水ハザードマップ作成に対する国庫補助制度が策定されたことを契機にハザードマップの普及は進んだ(榎村,2012).各自治体のWebページにおいてpdfデータでハザードマップの提供,自治体が主導となり各世帯への紙のハザードマップの配布のみならず,国土地理院が国土交通省水管理・国土保全局と協力して提供する「国土交通省ハザードマップポータルサイト」等のWeb上でインタラクティブに災害情報を伝えるハザードマップも存在する(泉谷,2020).Web媒体でハザードマップの閲覧が可能になることで,広域を網羅したハザードマップの作成,各レイヤ情報の表示・非表示が可能となり,多くの情報を盛り込んでもインターフェイスが雑多で見づらくならない,ピンチイン・アウトが可能となり詳細な地図情報を表示できるようになる等のpdf,紙媒体でのハザードマップの表現の限界を克服している.

###1.2本研究における問題意識

Expand Down Expand Up @@ -75,6 +75,7 @@ Google MapsとMAPS.MEともにインターネット接続が困難な状態で
###2.3.オフラインハザードマップの先行研究

2.2で論じた通り,洪水災害時のインターネット接続が困難な場合においてデジタルなハザードマップへのアクセスを確立することは急務である.本節では災害時のオフライン環境下におけるハザードマップ及びオフライン地図の先行研究を紹介するともに,既往研究における課題を整理する.災害時のオフライン環境でのハザードマップ利用を可能とするものとして,オフライン対応型災害時避難支援システム「あかりマップ」が挙げられる(吉野ほか,2017).「あかりマップ」は災害時のオフライン環境での稼働に特化した災害時避難支援システムである.このシステムはAndroidが搭載されたスマートフォン端末でのみ利用することができ,災害が発生する前に利用者が自身の端末に地図情報,避難支援情報をダウンロードすることを想定している(図3).
事前にダウンロードされた情報は,災害が発生し通信網が利用不可能になった場合でも,利用者が端末上でアクセスできるようになっている.端末上で表示される情報には,浸水域,避難所の位置,AED(自動体外式除細動器)の設置場所,コンビニエンスストアの場所,自動販売機の設置場所が含まれ,これらの情報はオフライン状態でも参照可能となっている.また,利用者にデバイスの電池残量を意識させるため,画面上部に電池残量を示すバーが設置されている.「あかりマップ」は2.2で指摘した課題を克服し,オフライン環境下で激甚災害の避難において重要な情報を提供できる設計になっている.一方で,オフラインで活用可能な洪水ハザードマップとしては3つの課題が存在している.1つ目は特定オペレーティングシステム(以下OSという)に依存している点である.「あかりマップ」はAndroidを搭載したスマートフォンのみで利用することができ,他のOSでの利用が不可能な設計になっている.2点目はユーザーによる事前のダウンロードが必要な点である.2.1で述べた通り,洪水被害発生時にはインターネットに接続することが難しい場合が生じる.ユーザーが地図情報,避難支援情報を事前にダウンロードしていない場合,「あかりまっぷ」を利用することができない.3つ目は標高に関する情報が地図上で確認できない点である(図4).

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<imgwidth="600"alt="image"src="https://github.com/ShogoHirasawa/2023-syuron/assets/29940264/2f32189f-7727-4009-8304-fcc726a80f48">
Expand All @@ -84,7 +85,7 @@ Google MapsとMAPS.MEともにインターネット接続が困難な状態で
(図3あかりマップのシステム図.吉野ほか『災害時支援システム“あかりマップ”の地域住民による防災マップ作成への適用』から引用)
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事前にダウンロードされた情報は,災害が発生し通信網が利用不可能になった場合でも,利用者が端末上でアクセスできるようになっている.端末上で表示される情報には,浸水域,避難所の位置,AED(自動体外式除細動器)の設置場所,コンビニエンスストアの場所,自動販売機の設置場所が含まれ,これらの情報はオフライン状態でも参照可能となっている.また,利用者にデバイスの電池残量を意識させるため,画面上部に電池残量を示すバーが設置されている.「あかりマップ」は2.2で指摘した課題を克服し,オフライン環境下で激甚災害の避難において重要な情報を提供できる設計になっている.一方で,オフラインで活用可能な洪水ハザードマップとしては3つの課題が存在している.1つ目は特定オペレーティングシステム(以下OSという)に依存している点である.「あかりマップ」はAndroidを搭載したスマートフォンのみで利用することができ,他のOSでの利用が不可能な設計になっている.2点目はユーザーによる事前のダウンロードが必要な点である.2.1で述べた通り,洪水被害発生時にはインターネットに接続することが難しい場合が生じる.ユーザーが地図情報,避難支援情報を事前にダウンロードしていない場合,「あかりまっぷ」を利用することができない.3つ目は標高に関する情報が地図上で確認できない点である(図4).


<palign="center">
<imgwidth="600"alt="image"src="https://github.com/ShogoHirasawa/2023-syuron/assets/29940264/2f256f20-1c0f-4e11-a8d9-5f28844bea39">
Expand Down Expand Up @@ -555,7 +556,7 @@ Raspberry Pi 4を基盤とした,ハザードマップをイントラネット

本研究を通じて利用者に対して,洪水災害時における危険地帯の認識させることは示せたが,本システムが実際の避難行動にどのように影響するかについては検証できていない.本研究を発展させ今後は危険地帯の認知のみならず,危険地帯を踏まえた上で適切な避難経路のルーティングを行う機能実装が必要であると考える.本節では,実装の寄与となりうる先行事例を提示し,最後に今後の研究の発展可能性について論じる.
危険地帯を考慮したルーティングを行うには,2点の機能実装が必要である.1つはオフライン環境における位置情報の取得について,2つ目は危険地帯を避ける避難ルート検索機能である.現在位置を取得するためにはRaspberry Pi 4本体にGPSレシーバーを装着する必要がある.本システムはhttpsプロトコルではなくhttpプロトコルを採用しているため,利用者のスマートフォンの位置情報を取得してブラウザ上で利用することはできない.故にRaspberry Pi 4自体にGPSレシーバーを導入し,位置情報を利用する必要がある.一方で,オフライン環境下で位置情報を取得する場合はコールドスタートとなり,現在位置を表示するのにかなりの時間を要する場合がある.コールドスタートとは,GPSレシーバーが初めての位置情報を決定するプロセスのことである.この状態では,受信機はその時点で位置情報取得に係るデータを一切知らず,これらの情報をゼロから取得しなければならない.このプロセスには時間がかかることがあり,特に衛星信号が弱いか,障害物によって遮られている場合には,受信機が必要な全ての情報を集めるまでに数分から数十分かかることがある.コールドスタートでは位置情報表示にかなりの時間を要する場合があるため,事前に位置情報取得に必要なデータをプリインストールするなどして,コールドスタートを回避するなどの手法が求められる.
危険地帯を考慮したルーティングシステムの構築に関しては,既往事例を援用することで実装が可能であると考える.国土交通省(2023)では洪水災害時の浸水地帯を避けるルーティングシステムを構築を実現させた.この事例ではOpenStreetMapの道路ネットワークデータとPostgreSQLデータベースの拡張機能であるpgRoutingを用いて,浸水域を避けるルート検索機能を実装している(図34).
危険地帯を考慮したルーティングシステムの構築に関しては,既往事例を援用することで実装が可能であると考える.国土交通省(2023)では洪水災害時の浸水地帯を避けるルーティングシステムを構築を実現させた.この事例ではOpenStreetMapの道路ネットワークデータとPostgreSQLデータベースの拡張機能であるpgRoutingを用いて,浸水域を避けるルート検索機能を実装している(図36).

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<imgwidth="600"alt="image"src="https://github.com/ShogoHirasawa/2023-syuron/assets/29940264/55aecd98-a21d-439d-a693-e6361a373af6">
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