Copyright (C) 2001-2003, 2005, 2006 Toshiaki Katayama <[email protected]>
Copyright (C) 2005, 2006 Naohisa Goto <[email protected]>
BioRuby は国産の高機能オブジェクト指向スクリプト言語 Ruby のためのオープンソースなバイオインフォマティクス用ライブラリです。
Ruby 言語は Perl 言語ゆずりの強力なテキスト処理と、シンプルで分かりやすい文法、クリアなオブジェクト指向機能により、広く使われるようになりました。Ruby について詳しくは、ウェブサイトhttp://www.ruby-lang.org/ や市販の書籍等を参照してください。
BioRuby を使用するには Ruby と BioRuby をインストールする必要があります。
Ruby は Mac OS X や最近の UNIX には通常インストールされています。 Windows の場合も1クリックインストーラや ActiveScriptRuby などが用意されています。まだインストールされていない場合は
などを参考にしてインストールしましょう。
あなたのコンピュータにどのバージョンの Ruby がインストールされているかをチェックするには
% ruby -v
とコマンドを入力してください。すると、たとえば
ruby 1.8.2 (2004-12-25) [powerpc-darwin7.7.0]
のような感じでバージョンが表示されます。バージョン 1.8.5 以降をお勧めします。
Ruby 標準装備のクラスやメソッドについては、Ruby のリファレンスマニュアルを参照してください。
コマンドラインでヘルプを参照するには、Ruby 標準添付の ri コマンドや、日本語版の refe コマンドが便利です。
RubyGems のページから最新版をダウンロードします。
展開してインストールします。
% tar zxvf rubygems-x.x.x.tar.gz
% cd rubygems-x.x.x
% ruby setup.rb
BioRuby のインストール方法は http://bioruby.org/archive/ から最新版を取得して以下のように行います(※1)。同梱されている README ファイルにも目を通して頂きたいのですが、慣れないと1日がかりになる BioPerl と比べて BioRuby のインストールはすぐに終わるはずです。
% wget http://bioruby.org/archive/bioruby-x.x.x.tar.gz
% tar zxvf bioruby-x.x.x.tar.gz
% cd bioruby-x.x.x
% su
# ruby setup.rb
RubyGems が使える環境であれば
% gem install bio
だけでインストールできます。このあと README ファイルに書かれているように
bioruby-x.x.x/etc/bioinformatics/seqdatabase.ini
というファイルをホームディレクトリの ~/.bioinformatics にコピーしておくとよいでしょう。RubyGems の場合は
/usr/local/lib/ruby/gems/1.8/gems/bio-x.x.x/
などにあるはずです。
% mkdir ~/.bioinformatics
% cp bioruby-x.x.x/etc/bioinformatics/seqdatabase.ini ~/.bioinformatics
また、Emacs エディタを使う人は Ruby のソースに同梱されている misc/ruby-mode.el をインストールしておくとよいでしょう。
% mkdir -p ~/lib/lisp/ruby
% cp ruby-x.x.x/misc/ruby-mode.el ~/lib/lisp/ruby
などとしておいて、~/.emacs に以下の設定を書き足します。
; subdirs の設定
(let ((default-directory "~/lib/lisp"))
(normal-top-level-add-subdirs-to-load-path)
; ruby-mode の設定
(autoload 'ruby-mode "ruby-mode" "Mode for editing ruby source files")
(add-to-list 'auto-mode-alist '("\\.rb$" . rd-mode))
(add-to-list 'interpeter-mode-alist '("ruby" . ruby-mode))
BioRuby バージョン 0.7 以降では、簡単な操作は BioRuby と共にインストールされる bioruby コマンドで行うことができます。bioruby コマンドは Ruby に内蔵されているインタラクティブシェル irb を利用しており、Ruby と BioRuby にできることは全て自由に実行することができます。
% bioruby project1
引数で指定した名前のディレクトリが作成され、その中で解析を行います。上記の例の場合 project1 というディレクトリが作成され、さらに以下のサブディレクトリやファイルが作られます。
data/ ユーザの解析ファイルを置く場所
plugin/ 必要に応じて追加のプラグインを置く場所
session/ 設定やオブジェクト、ヒストリなどが保存される場所
session/config ユーザの設定を保存したファイル
session/history ユーザの入力したコマンドのヒストリを保存したファイル
session/object 永続化されたオブジェクトの格納ファイル
このうち、data ディレクトリはユーザが自由に書き換えて構いません。また、session/history ファイルを見ると、いつどのような操作を行ったかを確認することができます。
2回目以降は、初回と同様に
% bioruby project1
として起動しても構いませんし、作成されたディレクトリに移動して
% cd project1
% bioruby
のように引数なしで起動することもできます。
この他、script コマンドで作成されるスクリプトファイルや、 web コマンドで作成される Rails のための設定ファイルなどがありますが、それらについては必要に応じて後述します。
BioRuby シェルではデフォルトでいくつかの便利なライブラリを読み込んでいます。例えば readline ライブラリが使える環境では Tab キーでメソッド名や変数名が補完されるはずです。open-uri, pp, yaml なども最初から読み込まれています。
- getseq(str)
getseq コマンド(※2)を使って文字列から塩基配列やアミノ酸配列を作ることができます。塩基とアミノ酸は ATGC の含量が 90% 以上かどうかで自動判定されます。ここでは、できた塩基配列を dna という変数に代入します。
bioruby> dna = getseq("atgcatgcaaaa")
変数の中身を確認するには Ruby の puts メソッドを使います。
bioruby> puts dna
atgcatgcaaaa
ファイル名を引数に与えると手元にあるファイルから配列を得ることもできます。 GenBank, EMBL, UniProt, FASTA など主要な配列フォーマットは自動判別されます(拡張子などのファイル名ではなくエントリの中身で判定します)。以下は UniProt フォーマットのエントリをファイルから読み込んでいます。この方法では、複数のエントリがある場合最初のエントリだけが読み込まれます。
bioruby> cdc2 = getseq("p04551.sp")
bioruby> puts cdc2
MENYQKVEKIGEGTYGVVYKARHKLSGRIVAMKKIRLEDESEGVPSTAIREISLLKEVNDENNRSN...(略)
データベース名とエントリ名が分かっていれば、インターネットを通じて配列を自動的に取得することができます。
bioruby> psaB = getseq("genbank:AB044425")
bioruby> puts psaB
actgaccctgttcatattcgtcctattgctcacgcgatttgggatccgcactttggccaaccagca...(略)
どこのデータベースからどのような方法でエントリを取得するかは、BioPerl などと共通の OBDA 設定ファイル ~/.bioinformatics/seqdatabase.ini を用いてデータベースごとに指定することができます(後述)。また、EMBOSS の seqret コマンドによる配列取得にも対応していますので、 EMBOSS の USA 表記でもエントリを取得できます。EMBOSS のマニュアルを参照し ~/.embossrc を適切に設定してください。
どの方法で取得した場合も、getseq コマンドによって返される配列は、汎用の配列クラス Bio::Sequence になります(※3)。
配列が塩基配列とアミノ酸配列のどちらと判定されているのかは、 moltype メソッドを用いて
bioruby> p cdc2.moltype
Bio::Sequence::AA
bioruby> p psaB.moltype
Bio::Sequence::NA
のように調べることができます。自動判定が間違っている場合などには na, aa メソッドで強制的に変換できます。なお、これらのメソッドは元のオブジェクトを強制的に書き換えます。
bioruby> dna.aa
bioruby> p dna.moltype
Bio::Sequence::AA
bioruby> dna.na
bioruby> p dna.moltype
Bio::Sequence::NA
または、to_naseq, to_aaseq メソッドで強制的に変換することもできます。
bioruby> pep = dna.to_aaseq
to_naseq, to_aaseq メソッドの返すオブジェクトは、それぞれ、 DNA 配列のための Bio::Sequence::NA クラス、アミノ酸配列のための Bio::Sequence::AA クラスのオブジェクトになります。配列がどちらのクラスに属するかは Ruby の class メソッドを用いて
bioruby> p pep.class
Bio::Sequence::AA
のように調べることができます。
強制的に変換せずに、Bio::Sequence::NA クラスまたは Bio::sequence::AA クラスのどちらかのオブジェクトを得たい場合には seq メソッドを使います(※4)。
bioruby> pep2 = cdc2.seq
bioruby> p pep2.class
Bio::Sequence::AA
また、以下で解説する complement や translate などのメソッドの結果は、塩基配列を返すことが期待されるメソッドは Bio::Sequence::NA クラス、アミノ酸配列を返すことが期待されるメソッドは Bio::sequence::AA クラスのオブジェクトになります。
塩基配列やアミノ酸配列のクラスは Ruby の文字列クラスである String を継承しています。また、Bio::Sequence クラスのオブジェクトは String のオブジェクトと見かけ上同様に働くように工夫されています。このため、 length で長さを調べたり、+ で足し合わせたり、* で繰り返したりなど、 Ruby の文字列に対して行える操作は全て利用可能です。このような特徴はオブジェクト指向の強力な側面の一つと言えるでしょう。
bioruby> puts dna.length
12
bioruby> puts dna + dna
atgcatgcaaaaatgcatgcaaaa
bioruby> puts dna * 5
atgcatgcaaaaatgcatgcaaaaatgcatgcaaaaatgcatgcaaaaatgcatgcaaaa
- complement
塩基配列の相補鎖配列を得るには塩基配列の complement メソッドを呼びます。
bioruby> puts dna.complement
ttttgcatgcat
- translate
塩基配列をアミノ酸配列に翻訳するには translate メソッドを使います。翻訳されたアミノ酸配列を pep という変数に代入してみます。
bioruby> pep = dna.translate
bioruby> puts pep
MHAK
フレームを変えて翻訳するには
bioruby> puts dna.translate(2)
CMQ
bioruby> puts dna.translate(3)
ACK
などとします。
- molecular_weight
分子量は molecular_weight メソッドで表示されます。
bioruby> puts dna.molecular_weight
3718.66444
bioruby> puts pep.molecular_weight
485.605
- seqstat(seq)
seqstat コマンドを使うと、組成などの情報も一度に表示されます。
bioruby> seqstat(dna)
* * * Sequence statistics * * *
5'->3' sequence : atgcatgcaaaa
3'->5' sequence : ttttgcatgcat
Translation 1 : MHAK
Translation 2 : CMQ
Translation 3 : ACK
Translation -1 : FCMH
Translation -2 : FAC
Translation -3 : LHA
Length : 12 bp
GC percent : 33 %
Composition : a - 6 ( 50.00 %)
c - 2 ( 16.67 %)
g - 2 ( 16.67 %)
t - 2 ( 16.67 %)
Codon usage :
*---------------------------------------------*
| | 2nd | |
| 1st |-------------------------------| 3rd |
| | U | C | A | G | |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| U U |F 0.0%|S 0.0%|Y 0.0%|C 0.0%| u |
| U U |F 0.0%|S 0.0%|Y 0.0%|C 0.0%| c |
| U U |L 0.0%|S 0.0%|* 0.0%|* 0.0%| a |
| UUU |L 0.0%|S 0.0%|* 0.0%|W 0.0%| g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| CCCC |L 0.0%|P 0.0%|H 25.0%|R 0.0%| u |
| C |L 0.0%|P 0.0%|H 0.0%|R 0.0%| c |
| C |L 0.0%|P 0.0%|Q 0.0%|R 0.0%| a |
| CCCC |L 0.0%|P 0.0%|Q 0.0%|R 0.0%| g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| A |I 0.0%|T 0.0%|N 0.0%|S 0.0%| u |
| A A |I 0.0%|T 0.0%|N 0.0%|S 0.0%| c |
| AAAAA |I 0.0%|T 0.0%|K 25.0%|R 0.0%| a |
| A A |M 25.0%|T 0.0%|K 0.0%|R 0.0%| g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| GGGG |V 0.0%|A 0.0%|D 0.0%|G 0.0%| u |
| G |V 0.0%|A 0.0%|D 0.0%|G 0.0%| c |
| G GGG |V 0.0%|A 25.0%|E 0.0%|G 0.0%| a |
| GG G |V 0.0%|A 0.0%|E 0.0%|G 0.0%| g |
*---------------------------------------------*
Molecular weight : 3718.66444
Protein weight : 485.605
//
アミノ酸配列の場合は以下のようになります。
bioruby> seqstat(pep)
* * * Sequence statistics * * *
N->C sequence : MHAK
Length : 4 aa
Composition : A Ala - 1 ( 25.00 %) alanine
H His - 1 ( 25.00 %) histidine
K Lys - 1 ( 25.00 %) lysine
M Met - 1 ( 25.00 %) methionine
Protein weight : 485.605
//
- composition
seqstat の中で表示されている組成は composition メソッドで得ることができます。結果が文字列ではなく Hash で返されるので、とりあえず表示してみる場合には puts の代わりに p コマンドを使うと良いでしょう。
bioruby> p dna.composition
{"a"=>6, "c"=>2, "g"=>2, "t"=>2}
他にも塩基配列、アミノ酸配列に対して行える操作は色々とあります。
- subseq(from, to)
部分配列を取り出すには subseq メソッドを使います。
bioruby> puts dna.subseq(1, 3)
atg
Ruby など多くのプログラミング言語の文字列は 1 文字目を 0 から数えますが、 subseq メソッドは 1 から数えて切り出せるようになっています。
bioruby> puts dna[0, 3]
atg
Ruby の String クラスが持つ slice メソッド str[] と適宜使い分けるとよいでしょう。
- window_search(len, step)
window_search メソッドを使うと長い配列の部分配列毎の繰り返しを簡単に行うことができます。DNA 配列をコドン毎に処理する場合、3文字ずつずらしながら3文字を切り出せばよいので以下のようになります。
bioruby> dna.window_search(3, 3) do |codon|
bioruby+ puts "#{codon}\t#{codon.translate}"
bioruby+ end
atg M
cat H
gca A
aaa K
ゲノム配列を、末端 1000bp をオーバーラップさせながら 11000bp ごとにブツ切りにし FASTA フォーマットに整形する場合は以下のようになります。
bioruby> seq.window_search(11000, 10000) do |subseq|
bioruby+ puts subseq.to_fasta
bioruby+ end
最後の 10000bp に満たない 3' 端の余り配列は返り値として得られるので、必要な場合は別途受け取って表示します。
bioruby> i = 1
bioruby> remainder = seq.window_search(11000, 10000) do |subseq|
bioruby+ puts subseq.to_fasta("segment #{i*10000}", 60)
bioruby+ i += 1
bioruby+ end
bioruby> puts remainder.to_fasta("segment #{i*10000}", 60)
- splicing(position)
塩基配列の GenBank 等の position 文字列による切り出しは splicing メソッドで行います。
bioruby> puts dna
atgcatgcaaaa
bioruby> puts dna.splicing("join(1..3,7..9)")
atggca
- randomize
randomize メソッドは、配列の組成を保存したままランダム配列を生成します。
bioruby> puts dna.randomize
agcaatagatac
- to_re
to_re メソッドは、曖昧な塩基の表記を含む塩基配列を atgc だけのパターンからなる正規表現に変換します。
bioruby> ambiguous = getseq("atgcyatgcatgcatgc")
bioruby> p ambiguous.to_re
/atgc[tc]atgcatgcatgc/
bioruby> puts ambiguous.to_re
(?-mix:atgc[tc]atgcatgcatgc)
seq メソッドは ATGC の含有量が 90% 以下だとアミノ酸配列とみなすので、曖昧な塩基が多く含まれる配列の場合は to_naseq メソッドを使って明示的に Bio::Sequence::NA オブジェクトに変換する必要があります。
bioruby> s = getseq("atgcrywskmbvhdn").to_naseq
bioruby> p s.to_re
/atgc[ag][tc][at][gc][tg][ac][tgc][agc][atc][atg][atgc]/
bioruby> puts s.to_re
(?-mix:atgc[ag][tc][at][gc][tg][ac][tgc][agc][atc][atg][atgc])
- names
あまり使うことはありませんが、配列を塩基名やアミノ酸名に変換するメソッドです。
bioruby> p dna.names
["adenine", "thymine", "guanine", "cytosine", "adenine", "thymine",
"guanine", "cytosine", "adenine", "adenine", "adenine", "adenine"]
bioruby> p pep.names
["methionine", "histidine", "alanine", "lysine"]
- codes
アミノ酸配列を3文字コードに変換する names と似たメソッドです。
bioruby> p pep.codes
["Met", "His", "Ala", "Lys"]
- gc_percent
塩基配列の GC 含量は gc_percent メソッドで得られます。
bioruby> p dna.gc_percent
33
- to_fasta
FASTA フォーマットに変換するには to_fasta メソッドを使います。
bioruby> puts dna.to_fasta("dna sequence")
>dna sequence
aaccggttacgt
アミノ酸、塩基、コドンテーブルを得るための aminoacids, nucleicacids, codontables, codontable コマンドを紹介します。
- aminoacids
アミノ酸の一覧は aminoacids コマンドで表示できます。
bioruby> aminoacids
? Pyl pyrrolysine
A Ala alanine
B Asx asparagine/aspartic acid
C Cys cysteine
D Asp aspartic acid
E Glu glutamic acid
F Phe phenylalanine
G Gly glycine
H His histidine
I Ile isoleucine
K Lys lysine
L Leu leucine
M Met methionine
N Asn asparagine
P Pro proline
Q Gln glutamine
R Arg arginine
S Ser serine
T Thr threonine
U Sec selenocysteine
V Val valine
W Trp tryptophan
Y Tyr tyrosine
Z Glx glutamine/glutamic acid
返り値は短い表記と対応する長い表記のハッシュになっています。
bioruby> aa = aminoacids
bioruby> puts aa["G"]
Gly
bioruby> puts aa["Gly"]
glycine
- nucleicacids
塩基の一覧は nucleicacids コマンドで表示できます。
bioruby> nucleicacids
a a Adenine
t t Thymine
g g Guanine
c c Cytosine
u u Uracil
r [ag] puRine
y [tc] pYrimidine
w [at] Weak
s [gc] Strong
k [tg] Keto
m [ac] aroMatic
b [tgc] not A
v [agc] not T
h [atc] not G
d [atg] not C
n [atgc]
返り値は塩基の1文字表記と該当する塩基のハッシュになっています。
bioruby> na = nucleicacids
bioruby> puts na["r"]
[ag]
- codontables
コドンテーブルの一覧は codontables コマンドで表示できます。
bioruby> codontables
1 Standard (Eukaryote)
2 Vertebrate Mitochondrial
3 Yeast Mitochondorial
4 Mold, Protozoan, Coelenterate Mitochondrial and Mycoplasma/Spiroplasma
5 Invertebrate Mitochondrial
6 Ciliate Macronuclear and Dasycladacean
9 Echinoderm Mitochondrial
10 Euplotid Nuclear
11 Bacteria
12 Alternative Yeast Nuclear
13 Ascidian Mitochondrial
14 Flatworm Mitochondrial
15 Blepharisma Macronuclear
16 Chlorophycean Mitochondrial
21 Trematode Mitochondrial
22 Scenedesmus obliquus mitochondrial
23 Thraustochytrium Mitochondrial
返り値はテーブル番号と名前のハッシュになっています。
bioruby> ct = codontables
bioruby> puts ct[3]
Yeast Mitochondorial
- codontable(num)
コドン表自体は codontable コマンドで表示できます。
bioruby> codontable(11)
= Codon table 11 : Bacteria
hydrophilic: H K R (basic), S T Y Q N S (polar), D E (acidic)
hydrophobic: F L I M V P A C W G (nonpolar)
*---------------------------------------------*
| | 2nd | |
| 1st |-------------------------------| 3rd |
| | U | C | A | G | |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| U U | Phe F | Ser S | Tyr Y | Cys C | u |
| U U | Phe F | Ser S | Tyr Y | Cys C | c |
| U U | Leu L | Ser S | STOP | STOP | a |
| UUU | Leu L | Ser S | STOP | Trp W | g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| CCCC | Leu L | Pro P | His H | Arg R | u |
| C | Leu L | Pro P | His H | Arg R | c |
| C | Leu L | Pro P | Gln Q | Arg R | a |
| CCCC | Leu L | Pro P | Gln Q | Arg R | g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| A | Ile I | Thr T | Asn N | Ser S | u |
| A A | Ile I | Thr T | Asn N | Ser S | c |
| AAAAA | Ile I | Thr T | Lys K | Arg R | a |
| A A | Met M | Thr T | Lys K | Arg R | g |
|-------+-------+-------+-------+-------+-----|
| GGGG | Val V | Ala A | Asp D | Gly G | u |
| G | Val V | Ala A | Asp D | Gly G | c |
| G GGG | Val V | Ala A | Glu E | Gly G | a |
| GG G | Val V | Ala A | Glu E | Gly G | g |
*---------------------------------------------*
返り値は Bio::CodonTable クラスのオブジェクトで、コドンとアミノ酸の変換ができるだけでなく、以下のようなデータも得ることができます。
bioruby> ct = codontable(2)
bioruby> p ct["atg"]
"M"
- definition
コドン表の定義の説明
bioruby> puts ct.definition
Vertebrate Mitochondrial
- start
開始コドン一覧
bioruby> p ct.start
["att", "atc", "ata", "atg", "gtg"]
- stop
終止コドン一覧
bioruby> p ct.stop
["taa", "tag", "aga", "agg"]
- revtrans
アミノ酸をコードするコドンを調べる
bioruby> p ct.revtrans("V")
["gtc", "gtg", "gtt", "gta"]
データベースのエントリと、フラットファイルそのものを扱う方法を紹介します。 GenBank データベースの中では、ファージのエントリが含まれる gbphg.seq のファイルサイズが小さいので、このファイルを例として使います。
% wget ftp://ftp.hgc.jp/pub/mirror/ncbi/genbank/gbphg.seq.gz
% gunzip gbphg.seq.gz
- getent(str)
getseq コマンドは配列を取得しましたが、配列だけでなくエントリ全体を取得するには getent コマンド(※2)を使います。getseq コマンド同様、getent コマンドでも OBDA, EMBOSS, NCBI, EBI, TogoWS のデータベースが利用可能です(※5)。設定については getseq コマンドの説明を参照してください。
bioruby> entry = getent("genbank:AB044425")
bioruby> puts entry
LOCUS AB044425 1494 bp DNA linear PLN 28-APR-2001
DEFINITION Volvox carteri f. kawasakiensis chloroplast psaB gene for
photosystem I P700 chlorophyll a apoprotein A2,
strain:NIES-732.
(略)
getent コマンドの引数には db:entry_id 形式の文字列、EMBOSS の USA、ファイル、IO が与えられ、データベースの1エントリ分の文字列が返されます。配列データベースに限らず、数多くのデータベースエントリに対応しています。
- flatparse(str)
取得したエントリをパースして欲しいデータをとりだすには flatparse コマンドを使います。
bioruby> entry = getent("gbphg.seq")
bioruby> gb = flatparse(entry)
bioruby> puts gb.entry_id
AB000833
bioruby> puts gb.definition
Bacteriophage Mu DNA for ORF1, sheath protein gpL, ORF2, ORF3, complete cds.
bioruby> puts psaB.naseq
acggtcagacgtttggcccgaccaccgggatgaggctgacgcaggtcagaaatctttgtgacgacaaccgtatcaat
(略)
- getobj(str)
getobj コマンド(※2)は、getent でエントリを文字列として取得し flatparse でパースしたオブジェクトに変換するのと同じです。getent コマンドと同じ引数を受け付けます。配列を取得する時は getseq、エントリを取得する時は getent、パースしたオブジェクトを取得する時は getobj を使うことになります。
bioruby> gb = getobj("gbphg.seq")
bioruby> puts gb.entry_id
AB000833
- flatfile(file)
getent コマンドは1エントリしか扱えないため、ローカルのファイルを開いて各エントリ毎に処理を行うには flatfile コマンドを使います。
bioruby> flatfile("gbphg.seq") do |entry|
bioruby+ # do something on entry
bioruby+ end
ブロックを指定しない場合は、ファイル中の最初のエントリを取得します。
bioruby> entry = flatfile("gbphg.seq")
bioruby> gb = flatparse(entry)
bioruby> puts gb.entry_id
- flatauto(file)
各エントリを flatparse と同様にパースした状態で順番に処理するためには、 flatfile コマンドの代わりに flatauto コマンドを使います。
bioruby> flatauto("gbphg.seq") do |entry|
bioruby+ print entry.entry_id
bioruby+ puts entry.definition
bioruby+ end
flatfile 同様、ブロックを指定しない場合は、ファイル中の最初のエントリを取得し、パースしたオブジェクトを返します。
bioruby> gb = flatfile("gbphg.seq")
bioruby> puts gb.entry_id
EMBOSS の dbiflat に似た機能として、BioRuby, BioPerl などに共通の BioFlat というインデックスを作成する仕組みがあります。一度インデックスを作成しておくとエントリの取り出しが高速かつ容易に行えます。これにより自分専用のデータベースを手軽に作ることができます。
- flatindex(db_name, *source_file_list)
GenBank のファージの配列ファイル gbphg.seq に入っているエントリに対して mydb というデータベース名でインデックスを作成します。
bioruby> flatindex("mydb", "gbphg.seq")
Creating BioFlat index (.bioruby/bioflat/mydb) ... done
- flatsearch(db_name, entry_id)
作成した mydb データベースからエントリをとり出すには flatsearch コマンドを使います。
bioruby> entry = flatsearch("mydb", "AB004561")
bioruby> puts entry
LOCUS AB004561 2878 bp DNA linear PHG 20-MAY-1998
DEFINITION Bacteriophage phiU gene for integrase, complete cds, integration
site.
ACCESSION AB004561
(略)
FASTA フォーマットは配列データで標準的に用いられているフォーマットです。「>」記号ではじまる1行目に配列の説明があり、2行目以降に配列がつづきます。配列中の空白文字は無視されます。
>entry_id definition ...
ACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGT
ACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGTACGT
配列の説明行は、最初の単語が配列の ID になっていることが多いのですが、 NCBI の BLAST 用データベースではさらに高度な構造化がおこなわれています。
- ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/documents/README.formatdb
- http://blast.wustl.edu/doc/FAQ-Indexing.html#Identifiers
- FASTA format (Wikipedia) http://en.wikipedia.org/wiki/Fasta_format
BioRuby のデータベースエントリのクラスにはエントリID、配列、定義について共通のメソッドが用意されています。
- entry_id - エントリ ID を取得
- definition - 定義文を取得
- seq - 配列を取得
これらの共通メソッドを使うと、どんな配列データベースエントリでも FASTA フォーマットに変換できるプログラムが簡単に作れます。
entry.seq.to_fasta("#{entry.entry_id} #{entry.definition}", 60)
さらに、BioRuby では入力データベースの形式を自動判別できますので、 GenBank, UniProt など多くの主要な配列データベースではファイル名を指定するだけで FASTA フォーマットに変換できます。
- flatfasta(fasta_file, *source_file_list)
入力データベースのファイル名のリストから、指定した FASTA フォーマットのファイルを生成するコマンドです。ここではいくつかの GenBank のファイルを FASTA フォーマットに変換し、myfasta.fa というファイルに保存しています。
bioruby> flatfasta("myfasta.fa", "gbphg.seq", "gbvrl1.seq", "gbvrl2.seq")
Saving fasta file (myfasta.fa) ...
converting -- gbphg.gbk
converting -- gbvrl1.gbk
converting -- gbvrl2.gbk
done
作業手順をスクリプト化して保存しておくこともできます。
bioruby> script
-- 8< -- 8< -- 8< -- Script -- 8< -- 8< -- 8< --
bioruby> seq = getseq("gbphg.seq")
bioruby> p seq
bioruby> p seq.translate
bioruby> script
-- >8 -- >8 -- >8 -- Script -- >8 -- >8 -- >8 --
Saving script (script.rb) ... done
生成された script.rb は以下のようになります。
#!/usr/bin/env bioruby
seq = getseq("gbphg.seq")
p seq
p seq.translate
このスクリプトは bioruby コマンドで実行することができます。
% bioruby script.rb
- cd(dir)
カレントディレクトリを変更します。
bioruby> cd "/tmp"
"/tmp"
ホームディレクトリに戻るには引数をつけずに cd を実行します。
bioruby> cd
"/home/k"
- pwd
カレントディレクトリを表示します。
bioruby> pwd
"/home/k"
- dir
カレントディレクトリのファイルを一覧表示します。
bioruby> dir
UGO Date Byte File
------ ---------------------------- ----------- ------------
40700 Tue Dec 06 07:07:35 JST 2005 1768 "Desktop"
40755 Tue Nov 29 16:55:20 JST 2005 2176 "bin"
100644 Sat Oct 15 03:01:00 JST 2005 42599518 "gbphg.seq"
(略)
bioruby> dir "gbphg.seq"
UGO Date Byte File
------ ---------------------------- ----------- ------------
100644 Sat Oct 15 03:01:00 JST 2005 42599518 "gbphg.seq"
- head(file, lines = 10)
テキストファイルやオブジェクトの先頭 10 行を表示します。
bioruby> head "gbphg.seq"
GBPHG.SEQ Genetic Sequence Data Bank
October 15 2005
NCBI-GenBank Flat File Release 150.0
Phage Sequences
2713 loci, 16892737 bases, from 2713 reported sequences
表示する行数を指定することもできます。
bioruby> head "gbphg.seq", 2
GBPHG.SEQ Genetic Sequence Data Bank
October 15 2005
テキストの入っている変数の先頭を見ることもできます。
bioruby> entry = getent("gbphg.seq")
bioruby> head entry, 2
GBPHG.SEQ Genetic Sequence Data Bank
October 15 2005
- disp(obj)
テキストファイルやオブジェクトの中身をページャーで表示します。ここで使用するページャーは pager コマンドで変更することができます(後述)。
bioruby> disp "gbphg.seq"
bioruby> disp entry
bioruby> disp [1, 2, 3] * 4
- ls
セッション中に作成した変数(オブジェクト)の一覧を表示します。
bioruby> ls
["entry", "seq"]
bioruby> a = 123
["a", "entry", "seq"]
- rm(symbol)
変数を消去します。
bioruby> rm "a"
bioruby> ls
["entry", "seq"]
- savefile(filename, object)
変数に保存されている内容をテキストファイルに保存します。
bioruby> savefile "testfile.txt", entry
Saving data (testfile.txt) ... done
bioruby> disp "testfile.txt"
永続化の仕組みとして BioRuby シェル終了時に session ディレクトリ内にヒストリ、オブジェクト、個人の設定が保存され、次回起動時に自動的に読み込まれます。
- config
BioRuby シェルの各種設定を表示します。
bioruby> config
message = "...BioRuby in the shell..."
marshal = [4, 8]
color = false
pager = nil
echo = false
echo 表示するかどうかを切り替えます。on の場合は、puts や p などをつけなくても評価した値が画面に表示されます。 irb コマンドの場合は初期設定が on になっていますが、bioruby コマンドでは長い配列やエントリなど長大な文字列を扱うことが多いため、初期設定では off にしています。
bioruby> config :echo
Echo on
==> nil
bioruby> config :echo
Echo off
コドン表など、可能な場合にカラー表示するかどうかを切り替えます。カラー表示の場合、プロンプトにも色がつきますので判別できます。
bioruby> config :color
bioruby> codontable
(色付き)
実行するたびに設定が切り替わります。
bioruby> config :color
bioruby> codontable
(色なし)
BioRuby シェル起動時に表示されるスプラッシュメッセージを違う文字列に変更します。何の解析プロジェクト用のディレクトリかを指定しておくのもよいでしょう。
bioruby> config :message, "Kumamushi genome project"
K u m a m u s h i g e n o m e p r o j e c t
Version : BioRuby 0.8.0 / Ruby 1.8.4
デフォルトの文字列に戻すには、引数なしで実行します。
bioruby> config :message
BioRuby シェル起動時に表示されるスプラッシュメッセ−ジをアニメーション表示するかどうかを切り替えます。こちらも実行するたびに設定が切り替わります。
bioruby> config :splash
Splash on
- pager(command)
disp コマンドで実際に利用するページャーを切り替えます。
bioruby> pager "lv"
Pager is set to 'lv'
bioruby> pager "less -S"
Pager is set to 'less -S'
ページャーを使用しない設定にする場合は引数なしで実行します。
bioruby> pager
Pager is set to 'off'
ページャーが off の時に引数なしで実行すると環境変数 PAGER の値を利用します。
bioruby> pager
Pager is set to 'less'
- doublehelix(sequence)
DNA 配列をアスキーアートで表示するオマケ機能があります。適当な塩基配列 seq を二重螺旋っぽく表示してみましょう。
bioruby> dna = getseq("atgc" * 10).randomize
bioruby> doublehelix dna
ta
t--a
a---t
a----t
a----t
t---a
g--c
cg
gc
a--t
g---c
c----g
c----g
(略)
- midifile(midifile, sequence)
DNA 配列を MIDI ファイルに変換するオマケ機能があります。適当な塩基配列 seq を使って生成した midifile.mid を MIDI プレイヤーで演奏してみましょう。
bioruby> midifile("midifile.mid", seq)
Saving MIDI file (midifile.mid) ... done
以上で BioRuby シェルの解説を終わり、以下では BioRuby ライブラリ自体の解説を行います。
Bio::Sequence クラスは、配列に対する様々な操作を行うことができます。簡単な例として、短い塩基配列 atgcatgcaaaa を使って、相補配列への変換、部分配列の切り出し、塩基組成の計算、アミノ酸への翻訳、分子量計算などを行なってみます。アミノ酸への翻訳では、必要に応じて何塩基目から翻訳を開始するかフレームを指定したり、codontable.rb で定義されているコドンテーブルの中から使用するものを指定したりする事ができます(コドンテーブルの番号は http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Utils/wprintgc.cgiを参照)。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
seq = Bio::Sequence::NA.new("atgcatgcaaaa")
puts seq # 元の配列
puts seq.complement # 相補配列 (Bio::Sequence::NA)
puts seq.subseq(3,8) # 3 塩基目から 8 塩基目まで
p seq.gc_percent # GC 塩基の割合 (Integer)
p seq.composition # 全塩基組成 (Hash)
puts seq.translate # 翻訳配列 (Bio::Sequence::AA)
puts seq.translate(2) # 2文字目から翻訳(普通は1から)
puts seq.translate(1,9) # 9番のコドンテーブルを使用
p seq.translate.codes # アミノ酸を3文字コードで表示 (Array)
p seq.translate.names # アミノ酸を名前で表示 (Array)
p seq.translate.composition # アミノ酸組成 (Hash)
p seq.translate.molecular_weight # 分子量を計算 (Float)
puts seq.complement.translate # 相補配列の翻訳
print, puts, p は内容を画面に表示するための Ruby 標準メソッドです。基本となる print と比べて、puts は改行を自動でつけてくれる、 p は文字列や数字以外のオブジェクトも人間が見やすいように表示してくれる、という特徴がありますので適宜使い分けます。さらに、
require 'pp'
とすれば使えるようになる pp メソッドは、p よりも表示が見やすくなります。
塩基配列は Bio::Sequence::NA クラスの、アミノ酸配列は Bio::Sequence::AA クラスのオブジェクトになります。それぞれ Bio::Sequence クラスを継承しているため、多くのメソッドは共通です。
さらに Bio::Sequence::NA, AA クラスは Ruby の String クラスを継承しているので String クラスが持つメソッドも使う事ができます。例えば部分配列を切り出すには Bio::Sequence クラスの subseq(from,to) メソッドの他に、String クラスの [] メソッドを使うこともできます。
Ruby の文字列は 1 文字目を 0 番目として数える点には注意が必要です。たとえば、
puts seq.subseq(1, 3)
puts seq[0, 3]
はどちらも seq の最初の3文字 atg を表示します。
このように、String のメソッドを使う場合は、生物学で普通使用される 1 文字目を 1 番目として数えた数字からは 1 を引く必要があります(subseq メソッドはこれを内部でやっています。また、from, to のどちらかでも 0 以下の場合は例外が発生するようになっています)。
ここまでの処理を BioRuby シェルで試すと以下のようになります。
# 次の行は seq = seq("atgcatgcaaaa") でもよい
bioruby> seq = Bio::Sequence::NA.new("atgcatgcaaaa")
# 生成した配列を表示
bioruby> puts seq
atgcatgcaaaa
# 相補配列を表示
bioruby> puts seq.complement
ttttgcatgcat
# 部分配列を表示(3塩基目から8塩基目まで)
bioruby> puts seq.subseq(3,8)
gcatgc
# 配列の GC% を表示
bioruby> p seq.gc_percent
33
# 配列の組成を表示
bioruby> p seq.composition
{"a"=>6, "c"=>2, "g"=>2, "t"=>2}
# アミノ酸配列への翻訳
bioruby> puts seq.translate
MHAK
# 2塩基を開始塩基として翻訳
bioruby> puts seq.translate(2)
CMQ
# 9番のコドンテーブルを使用して翻訳
bioruby> puts seq.translate(1,9)
MHAN
# 翻訳されたアミノ酸配列を3文字コードで表示
bioruby> p seq.translate.codes
["Met", "His", "Ala", "Lys"]
# 翻訳されたアミノ酸配列をアミノ酸の名前で表示
bioruby> p seq.translate.names
["methionine", "histidine", "alanine", "lysine"]
# 翻訳されたアミノ酸配列の組成を表示
bioruby> p seq.translate.composition
{"K"=>1, "A"=>1, "M"=>1, "H"=>1}
# 翻訳されたアミノ酸配列の分子量を表示
bioruby> p seq.translate.molecular_weight
485.605
# 相補配列を翻訳
bioruby> puts seq.complement.translate
FCMH
# 部分配列(1塩基目から3塩基目まで)
bioruby> puts seq.subseq(1, 3)
atg
# 部分配列(1塩基目から3塩基目まで)
bioruby> puts seq[0, 3]
atg
window_search(window_size, step_size) メソッドを使うと、配列に対してウィンドウをずらしながらそれぞれの部分配列に対する処理を行うことができます。 Ruby の特長のひとつである「ブロック」によって、「それぞれに対する処理」を簡潔かつ明瞭に書くことが可能です。以下の例では、subseq という変数にそれぞれ部分配列を代入しながらブロックを繰り返し実行することになります。
-
100 塩基ごとに(1塩基ずつずらしながら)平均 GC% を計算して表示する
seq.window_search(100) do |subseq| puts subseq.gc_percent end
ブロックの中で受け取る部分配列も、元と同じ Bio::Sequence::NA または Bio::Sequence::AA クラスのオブジェクトなので、配列クラスの持つ全てのメソッドを実行することができます。
また、2番目の引数に移動幅を指定することが出来るようになっているので、
-
コドン単位でずらしながら 15 塩基を 5 残基のペプチドに翻訳して表示する
seq.window_search(15, 3) do |subseq| puts subseq.translate end
といったことができます。さらに移動幅に満たない右端の部分配列をメソッド自体の返り値として戻すようになっているので、
-
ゲノム配列を 10000bp ごとにブツ切りにして FASTA フォーマットに整形、このとき末端 1000bp はオーバーラップさせ、10000bp に満たない 3' 端は別途受け取って表示する
i = 1 remainder = seq.window_search(10000, 9000) do |subseq| puts subseq.to_fasta("segment #{i}", 60) i += 1 end puts remainder.to_fasta("segment #{i}", 60)
のような事もわりと簡単にできます。
ウィンドウの幅と移動幅を同じにするとオーバーラップしないウィンドウサーチができるので、
-
コドン頻度を数える
codon_usage = Hash.new(0) seq.window_search(3, 3) do |subseq| codon_usage[subseq] += 1 end
-
10 残基ずつ分子量を計算
seq.window_search(10, 10) do |subseq| puts subseq.molecular_weight end
といった応用も考えられます。
実際には Bio::Sequence::NA オブジェクトはファイルから読み込んだ文字列から生成したり、データベースから取得したものを使ったりします。たとえば、
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
input_seq = ARGF.read # 引数で与えられたファイルの全行を読み込む
my_naseq = Bio::Sequence::NA.new(input_seq)
my_aaseq = my_naseq.translate
puts my_aaseq
このプログラムを na2aa.rb として、以下の塩基配列
gtggcgatctttccgaaagcgatgactggagcgaagaaccaaagcagtgacatttgtctg
atgccgcacgtaggcctgataagacgcggacagcgtcgcatcaggcatcttgtgcaaatg
tcggatgcggcgtga
を書いたファイル my_naseq.txt を読み込んで翻訳すると
% ./na2aa.rb my_naseq.txt
VAIFPKAMTGAKNQSSDICLMPHVGLIRRGQRRIRHLVQMSDAA*
のようになります。ちなみに、このくらいの例なら短くすると1行で書けます。
% ruby -r bio -e 'p Bio::Sequence::NA.new($<.read).translate' my_naseq.txt
しかし、いちいちファイルを作るのも面倒なので、次はデータベースから必要な情報を取得してみます。
GenBank 形式のファイルを用意してください(手元にない場合は、 ftp://ftp.ncbi.nih.gov/genbank/ から .seq ファイルをダウンロードします)。
% wget ftp://ftp.hgc.jp/pub/mirror/ncbi/genbank/gbphg.seq.gz
% gunzip gbphg.seq.gz
まずは、各エントリから ID と説明文、配列を取り出して FASTA 形式に変換してみましょう。
Bio::GenBank::DELIMITER は GenBank クラスで定義されている定数で、データベースごとに異なるエントリの区切り文字(たとえば GenBank の場合は //)を覚えていなくても良いようになっています。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
while entry = gets(Bio::GenBank::DELIMITER)
gb = Bio::GenBank.new(entry) # GenBank オブジェクト
print ">#{gb.accession} " # ACCESSION 番号
puts gb.definition # DEFINITION 行
puts gb.naseq # 塩基配列(Sequence::NA オブジェクト)
end
しかし、この書き方では GenBank ファイルのデータ構造に依存しています。ファイルからのデータ入力を扱うクラス Bio::FlatFile を使用することで、以下のように区切り文字などを気にせず書くことができます。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::GenBank, ARGF)
ff.each_entry do |gb|
definition = "#{gb.accession} #{gb.definition}"
puts gb.naseq.to_fasta(definition, 60)
end
形式の違うデータ、たとえばFASTAフォーマットのファイルを読み込むときでも、
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::FastaFormat, ARGF)
ff.each_entry do |f|
puts "definition : " + f.definition
puts "nalen : " + f.nalen.to_s
puts "naseq : " + f.naseq
end
のように、同じような書き方で済ませられます。
さらに、各 Bio::DB クラスの open メソッドで同様のことができます。たとえば、
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::GenBank.open("gbvrl1.seq")
ff.each_entry do |gb|
definition = "#{gb.accession} #{gb.definition}"
puts gb.naseq.to_fasta(definition, 60)
end
などと書くことができます(ただし、この書き方はあまり使われていません)。
次に、GenBank の複雑な FEATURES の中をパースして必要な情報を取り出します。まずは /tranlation="アミノ酸配列" という Qualifier がある場合だけアミノ酸配列を抽出して表示してみます。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::GenBank, ARGF)
# GenBank の1エントリごとに
ff.each_entry do |gb|
# FEATURES の要素を一つずつ処理
gb.features.each do |feature|
# Feature に含まれる Qualifier を全てハッシュに変換
hash = feature.to_hash
# Qualifier に translation がある場合だけ
if hash['translation']
# エントリのアクセッション番号と翻訳配列を表示
puts ">#{gb.accession}
puts hash['translation']
end
end
end
さらに、Feature のポジションに書かれている情報からエントリの塩基配列をスプライシングし、それを翻訳したものと /translation= に書かれていた配列を両方表示して比べてみましょう。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::GenBank, ARGF)
# GenBank の1エントリごとに
ff.each_entry do |gb|
# ACCESSION 番号と生物種名を表示
puts "### #{gb.accession} - #{gb.organism}"
# FEATURES の要素を一つずつ処理
gb.features.each do |feature|
# Feature の position (join ...など) を取り出す
position = feature.position
# Feature に含まれる Qualifier を全てハッシュに変換
hash = feature.to_hash
# /translation= がなければスキップ
next unless hash['translation']
# /gene=, /product= などの Qualifier から遺伝子名などの情報を集める
gene_info = [
hash['gene'], hash['product'], hash['note'], hash['function']
].compact.join(', ')
puts "## #{gene_info}"
# 塩基配列(position の情報によってスプライシング)
puts ">NA splicing('#{position}')"
puts gb.naseq.splicing(position)
# アミノ酸配列(スプライシングした塩基配列から翻訳)
puts ">AA translated by splicing('#{position}').translate"
puts gb.naseq.splicing(position).translate
# アミノ酸配列(/translation= に書かれていたのもの)
puts ">AA original translation"
puts hash['translation']
end
end
もし、使用されているコドンテーブルがデフォルト (universal) と違ったり、最初のコドンが "atg" 以外だったり、セレノシステインが含まれていたり、あるいは BioRuby にバグがあれば、上の例で表示される2つのアミノ酸配列は異なる事になります。
この例で使用されている Bio::Sequence#splicing メソッドは、GenBank, EMBL, DDBJ フォーマットで使われている Location の表記を元に、塩基配列から部分配列を切り出す強力なメソッドです。
この splicing メソッドの引数には GenBank 等の Location の文字列以外に BioRuby の Bio::Locations オブジェクトを渡すことも可能ですが、通常は見慣れている Location 文字列の方が分かりやすいかも知れません。 Location 文字列のフォーマットや Bio::Locations について詳しく知りたい場合は BioRuby の bio/location.rb を見てください。
-
GenBank 形式のデータの Feature で使われていた Location 文字列の例
naseq.splicing('join(2035..2050,complement(1775..1818),13..345')
-
あらかじめ Locations オブジェクトに変換してから渡してもよい
locs = Bio::Locations.new('join((8298.8300)..10206,1..855)') naseq.splicing(locs)
ちなみに、アミノ酸配列 (Bio::Sequence::AA) についても splicing メソッドを使用して部分配列を取り出すことが可能です。
-
アミノ酸配列の部分配列を切り出す(シグナルペプチドなど)
aaseq.splicing('21..119')
BioRuby では、GenBank 以外のデータベースについても基本的な扱い方は同じで、データベースの1エントリ分の文字列を対応するデータベースのクラスに渡せば、パースされた結果がオブジェクトになって返ってきます。
データベースのフラットファイルから1エントリずつ取り出してパースされたオブジェクトを取り出すには、先にも出てきた Bio::FlatFile を使います。 Bio::FlatFile.new の引数にはデータベースに対応する BioRuby でのクラス名 (Bio::GenBank や Bio::KEGG::GENES など) を指定します。
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::データベースクラス名, ARGF)
しかし、すばらしいことに、実は FlatFile クラスはデータベースの自動認識ができますので、
ff = Bio::FlatFile.auto(ARGF)
を使うのが一番簡単です。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ff = Bio::FlatFile.auto(ARGF)
ff.each_entry do |entry|
p entry.entry_id # エントリの ID
p entry.definition # エントリの説明文
p entry.seq # 配列データベースの場合
end
ff.close
さらに、開いたデータベースの閉じ忘れをなくすためには Ruby のブロックを活用して以下のように書くのがよいでしょう。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
Bio::FlatFile.auto(ARGF) do |ff|
ff.each_entry do |entry|
p entry.entry_id # エントリの ID
p entry.definition # エントリの説明文
p entry.seq # 配列データベースの場合
end
end
パースされたオブジェクトから、エントリ中のそれぞれの部分を取り出すためのメソッドはデータベース毎に異なります。よくある項目については
- entry_id メソッド → エントリの ID 番号が返る
- definition メソッド → エントリの定義行が返る
- reference メソッド → リファレンスオブジェクトが返る
- organism メソッド → 生物種名
- seq や naseq や aaseq メソッド → 対応する配列オブジェクトが返る
などのように共通化しようとしていますが、全てのメソッドが実装されているわけではありません(共通化の指針は bio/db.rb 参照)。また、細かい部分は各データベースパーザ毎に異なるので、それぞれのドキュメントに従います。
原則として、メソッド名が複数形の場合は、オブジェクトが配列として返ります。たとえば references メソッドを持つクラスは複数の Bio::Reference オブジェクトを Array にして返しますが、別のクラスでは単数形の reference メソッドしかなく、1つの Bio::Reference オブジェクトだけを返す、といった感じです。
Bio::PDB は、PDB 形式を読み込むためのクラスです。PDB データベースは PDB, mmCIF, XML (PDBML) の3種類のフォーマットで提供されていますが、これらのうち BioRuby で対応しているのは PDB フォーマットです。
PDB フォーマットの仕様は、以下の Protein Data Bank Contents Guide を参照してください。
PDB の1エントリが 1bl8.pdb というファイルに格納されている場合は、 Ruby のファイル読み込み機能を使って
entry = File.read("1bl8.pdb")
のようにすることで、エントリの内容を文字列として entry という変数に代入することができます。エントリの内容をパースするには
pdb = Bio::PDB.new(entry)
とします。これでエントリが Bio::PDB オブジェクトとなり、任意のデータを取り出せるようになります。
PDB フォーマットは Bio::FlatFile による自動認識も可能ですが、現在は1ファイルに複数エントリを含む場合には対応していません。 Bio::FlatFile を使って1エントリ分だけ読み込むには、
pdb = Bio::FlatFile.auto("1bl8.pdb") { |ff| ff.next_entry }
とします。どちらの方法でも変数 pdb には同じ結果が得られます。
各 PDB エントリは、英数字4文字からなる ID が付けられています。 Bio::PDB オブジェクトから ID を取リ出すには entry_id メソッドを使います。
p pdb.entry_id # => "1BL8"
エントリの概要に関する情報も対応するメソッドで取り出すことができます。
p pdb.definition # => "POTASSIUM CHANNEL (KCSA) FROM STREPTOMYCES LIVIDANS"
p pdb.keywords # => ["POTASSIUM CHANNEL", "INTEGRAL MEMBRANE PROTEIN"]
他に、登録者や文献、実験方法などの情報も取得できます(それぞれ authors, jrnl, method メソッド)。
PDB データは、基本的には1行が1つのレコードを形成しています。1行に入りきらないデータを複数行に格納する continuation という仕組みも用意されていますが、基本は1行1レコードです。
各行の先頭6文字がその行のデータの種類を示す名前(レコード)になります。 BioRuby では、HEADER レコードに対しては Bio::PDB::Record::HEADER クラス、 TITLE レコードに対しては Bio::PDB::Record::TITLE クラス、というように基本的には各レコードに対応するクラスを1つ用意しています。ただし、REMARK と JRNL レコードに関しては、それぞれ複数のフォーマットが存在するため、複数のクラスを用意しています。
各レコードにアクセスするもっとも単純な方法は record メソッドです。
pdb.record("HELIX")
のようにすると、その PDB エントリに含まれる全ての HELIX レコードを Bio::PDB::Record::HELIX クラスのオブジェクトの配列として取得できます。
このことをふまえ、以下では、PDB エントリのメインな内容である立体構造に関するデータ構造の扱い方を見ていきます。
PDB エントリは、タンパク質、核酸(DNA,RNA)やその他の分子の立体構造、具体的には原子の3次元座標を含んでいます。
タンパク質または核酸の原子の座標は、ATOM レコードに格納されています。対応するクラスは、Bio::PDB::Record::ATOM クラスです。
タンパク質・核酸以外の原子の座標は、HETATM レコードに格納されています。対応するクラスは、Bio::PDB::Record::HETATM クラスです。
HETATM クラスは ATOM クラスを継承しているため、ATOM と HETATM のメソッドの使い方はまったく同じです。
1アミノ酸または1塩基単位で原子をまとめたのが Bio::PDB::Residue です。 Bio::PDB::Residue オブジェクトは、1個以上の Bio::PDB::Record::ATOM オブジェクトを含みます。
タンパク質・核酸以外の分子の原子は、基本的には分子単位で Bio::PDB::Heterogen にまとめられています。 Bio::PDB::Heterogen オブジェクトは、1個以上の Bio::PDB::Record::HETATM オブジェクトを含みます。
Bio::PDB::Chain は、複数の Bio::PDB::Residue オブジェクトからなる1個のタンパク質または核酸と、複数の Bio::PDB::Heterogen オブジェクトからなる1個以上のそれ以外の分子を格納するデータ構造です。
なお、大半の場合は、タンパク質・核酸(Bio::PDB::Residue)か、それ以外の分子(Bio::PDB::Heterogen)のどちらか一種類しか持ちません。 Chain をひとつしか含まない PDB エントリでは両方持つ場合があるようです。
各 Chain には、英数字1文字の ID が付いています(Chain をひとつしか含まない PDB エントリの場合は空白文字のときもあります)。
1個以上の Bio::PDB::Chain が集まったものが Bio::PDB::Model です。X線結晶構造の場合、Model は通常1個だけですが、NMR 構造の場合、複数の Model が存在することがあります。複数の Model が存在する場合、各 Model にはシリアル番号が付きます。
そして、1個以上の Model が集まったものが、Bio::PDB オブジェクトになります。
Bio::PDB#each_atom は全ての ATOM を順番に1個ずつ辿るイテレータです。
pdb.each_atom do |atom|
p atom.xyz
end
この each_atom メソッドは Model, Chain, Residue オブジェクトに対しても使用することができ、それぞれ、その Model, Chain, Residue 内部のすべての ATOM をたどるイテレータとして働きます。
Bio::PDB#atoms は全ての ATOM を配列として返すメソッドです。
p pdb.atoms.size # => 2820 個の ATOM が含まれることがわかる
each_atom と同様に atoms メソッドも Model, Chain, Residue オブジェクトに対して使用可能です。
pdb.chains.each do |chain|
p chain.atoms.size # => 各 Chain 毎の ATOM 数が表示される
end
Bio::PDB#each_hetatm は、全ての HETATM を順番に1個ずつ辿るイテレータです。
pdb.each_hetatm do |hetatm|
p hetatm.xyz
end
Bio::PDB#hetatms 全ての HETATM を配列として返すのは hetatms メソッドです。
p pdb.hetatms.size
これらも atoms の場合と同様に、Model, Chain, Heterogen オブジェクトに対して使用可能です。
ATOM はタンパク質・核酸(DNA・RNA)を構成する原子、HETATM はそれ以外の原子を格納するためのクラスですが、HETATM が ATOM クラスを継承しているためこれらのクラスでメソッドの使い方はまったく同じです。
p atom.serial # シリアル番号
p atom.name # 名前
p atom.altLoc # Alternate location indicator
p atom.resName # アミノ酸・塩基名または化合物名
p atom.chainID # Chain の ID
p atom.resSeq # アミノ酸残基のシーケンス番号
p atom.iCode # Code for insertion of residues
p atom.x # X 座標
p atom.y # Y 座標
p atom.z # Z 座標
p atom.occupancy # Occupancy
p atom.tempFactor # Temperature factor
p atom.segID # Segment identifier
p atom.element # Element symbol
p atom.charge # Charge on the atom
これらのメソッド名は、原則として Protein Data Bank Contents Guide の記載に合わせています。メソッド名に resName や resSeq といった記名法(CamelCase)を採用しているのはこのためです。それぞれのメソッドの返すデータの意味は、仕様書を参考にしてください。
この他にも、いくつかの便利なメソッドを用意しています。 xyz メソッドは、座標を3次元のベクトルとして返すメソッドです。このメソッドは、Ruby の Vector クラスを継承して3次元のベクトルに特化させた Bio::PDB::Coordinate クラスのオブジェクトを返します(注: Vectorを継承したクラスを作成するのはあまり推奨されないようなので、将来、Vectorクラスのオブジェクトを返すよう仕様変更するかもしれません)。
p atom.xyz
ベクトルなので、足し算、引き算、内積などを求めることができます。
# 原子間の距離を求める
p (atom1.xyz - atom2.xyz).r # r はベクトルの絶対値を求めるメソッド
# 内積を求める
p atom1.xyz.inner_product(atom2.xyz)
他には、その原子に対応する TER, SIGATM, ANISOU レコードを取得する ter, sigatm, anisou メソッドも用意されています。
Bio::PDB#each_residue は、全ての Residue を順番に辿るイテレータです。 each_residue メソッドは、Model, Chain オブジェクトに対しても使用することができ、それぞれの Model, Chain に含まれる全ての Residue を辿るイテレータとして働きます。
pdb.each_residue do |residue|
p residue.resName
end
Bio::PDB#residues は、全ての Residue を配列として返すメソッドです。 each_residue と同様に、Model, Chain オブジェクトに対しても使用可能です。
p pdb.residues.size
Bio::PDB#each_heterogen は全ての Heterogen を順番にたどるイテレータ、 Bio::PDB#heterogens は全ての Heterogen を配列として返すメソッドです。
pdb.each_heterogen do |heterogeon|
p heterogen.resName
end
p pdb.heterogens.size
これらのメソッドも Residue と同様に Model, Chain オブジェクトに対しても使用可能です。
同様に、Bio::PDB#each_chain は全ての Chain を順番にたどるイテレータ、 Bio::PDB#chains は全ての Chain を配列として返すメソッドです。これらのメソッドは Model オブジェクトに対しても使用可能です。
Bio::PDB#each_model は全ての Model を順番にたどるイテレータ、 Bio::PDB#models は全ての Model を配列として返すメソッドです。
Bio::PDB::ChemicalComponent クラスは、PDB Chemical Component Dictionary (旧名称 HET Group Dictionary)のパーサです。
PDB Chemical Component Dictionary については以下のページを参照してください。
データは以下でダウンロードできます。
このクラスは、RESIDUE から始まって空行で終わる1エントリをパースします(PDB フォーマットにのみ対応しています)。
Bio::FlatFile によるファイル形式自動判別に対応しています。このクラス自体は ID から化合物を検索したりする機能は持っていません。 br_bioflat.rb によるインデックス作成には対応していますので、必要ならそちらを使用してください。
Bio::FlatFile.auto("het_dictionary.txt") |ff|
ff.each do |het|
p het.entry_id # ID
p het.hetnam # HETNAM レコード(化合物の名称)
p het.hetsyn # HETSYM レコード(化合物の別名の配列)
p het.formul # FORMUL レコード(化合物の組成式)
p het.conect # CONECT レコード
end
end
最後の conect メソッドは、化合物の結合を Hash として返します。たとえば、エタノールのエントリは次のようになりますが、
RESIDUE EOH 9
CONECT C1 4 C2 O 1H1 2H1
CONECT C2 4 C1 1H2 2H2 3H2
CONECT O 2 C1 HO
CONECT 1H1 1 C1
CONECT 2H1 1 C1
CONECT 1H2 1 C2
CONECT 2H2 1 C2
CONECT 3H2 1 C2
CONECT HO 1 O
END
HET EOH 9
HETNAM EOH ETHANOL
FORMUL EOH C2 H6 O1
このエントリに対して conect メソッドを呼ぶと
{ "C1" => [ "C2", "O", "1H1", "2H1" ],
"C2" => [ "C1", "1H2", "2H2", "3H2" ],
"O" => [ "C1", "HO" ],
"1H1" => [ "C1" ],
"1H2" => [ "C2" ],
"2H1" => [ "C1" ],
"2H2" => [ "C2" ],
"3H2" => [ "C2" ],
"HO" => [ "O" ] }
という Hash を返します。
ここまでの処理を BioRuby シェルで試すと以下のようになります。
# PDB エントリ 1bl8 をネットワーク経由で取得
bioruby> ent_1bl8 = getent("pdb:1bl8")
# エントリの中身を確認
bioruby> head ent_1bl8
# エントリをファイルに保存
bioruby> savefile("1bl8.pdb", ent_1bl8)
# 保存されたファイルの中身を確認
bioruby> disp "data/1bl8.pdb"
# PDB エントリをパース
bioruby> pdb_1bl8 = flatparse(ent_1bl8)
# PDB のエントリ ID を表示
bioruby> pdb_1bl8.entry_id
# getent("pdb:1bl8") して flatparse する代わりに、以下でもOK
bioruby> obj_1bl8 = getobj("pdb:1bl8")
bioruby> obj_1bl8.entry_id
# 各 HETEROGEN ごとに残基名を表示
bioruby> pdb_1bl8.each_heterogen { |heterogen| p heterogen.resName }
# PDB Chemical Component Dictionary を取得
bioruby> het_dic = open("http://deposit.pdb.org/het_dictionary.txt").read
# 取得したファイルのバイト数を確認
bioruby> het_dic.size
# 取得したファイルを保存
bioruby> savefile("data/het_dictionary.txt", het_dic)
# ファイルの中身を確認
bioruby> disp "data/het_dictionary.txt"
# 検索のためにインデックス化し het_dic というデータベースを作成
bioruby> flatindex("het_dic", "data/het_dictionary.txt")
# ID が EOH のエタノールのエントリを検索
bioruby> ethanol = flatsearch("het_dic", "EOH")
# 取得したエントリをパース
bioruby> osake = flatparse(ethanol)
# 原子間の結合テーブルを表示
bioruby> sake.conect
Bio::Alignment クラスは配列のアライメントを格納するためのコンテナです。 Ruby の Hash や Array に似た操作が可能で、BioPerl の Bio::SimpleAlign に似た感じになっています。以下に簡単な使い方を示します。
require 'bio'
seqs = [ 'atgca', 'aagca', 'acgca', 'acgcg' ]
seqs = seqs.collect{ |x| Bio::Sequence::NA.new(x) }
# アライメントオブジェクトを作成
a = Bio::Alignment.new(seqs)
# コンセンサス配列を表示
p a.consensus # ==> "a?gc?"
# IUPAC 標準の曖昧な塩基を使用したコンセンサス配列を表示
p a.consensus_iupac # ==> "ahgcr"
# 各配列について繰り返す
a.each { |x| p x }
# ==>
# "atgca"
# "aagca"
# "acgca"
# "acgcg"
# 各サイトについて繰り返す
a.each_site { |x| p x }
# ==>
# ["a", "a", "a", "a"]
# ["t", "a", "c", "c"]
# ["g", "g", "g", "g"]
# ["c", "c", "c", "c"]
# ["a", "a", "a", "g"]
# Clustal W を使用してアライメントを行う。
# 'clustalw' コマンドがシステムにインストールされている必要がある。
factory = Bio::ClustalW.new
a2 = a.do_align(factory)
FASTA 形式の配列ファイル query.pep に対して、自分のマシン(ローカル)あるいはインターネット上のサーバ(リモート)で FASTA による相同性検索を行う方法です。ローカルの場合は SSEARCH なども同様に使うことができます。
FASTA がインストールされていることを確認してください。以下の例では、コマンド名が fasta34 でパスが通ったディレクトリにインストールされている状況を仮定しています。
- ftp://ftp.virginia.edu/pub/fasta/
検索対象とする FASTA 形式のデータベースファイル target.pep と、FASTA 形式の問い合わせ配列がいくつか入ったファイル query.pep を準備します。
この例では、各問い合わせ配列ごとに FASTA 検索を実行し、ヒットした配列の evalue が 0.0001 以下のものだけを表示します。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
# FASTA を実行する環境オブジェクトを作る(ssearch などでも良い)
factory = Bio::Fasta.local('fasta34', ARGV.pop)
# フラットファイルを読み込み、FastaFormat オブジェクトのリストにする
ff = Bio::FlatFile.new(Bio::FastaFormat, ARGF)
# 1エントリずつの FastaFormat オブジェクトに対し
ff.each do |entry|
# '>' で始まるコメント行の内容を進行状況がわりに標準エラー出力に表示
$stderr.puts "Searching ... " + entry.definition
# FASTA による相同性検索を実行、結果は Fasta::Report オブジェクト
report = factory.query(entry)
# ヒットしたものそれぞれに対し
report.each do |hit|
# evalue が 0.0001 以下の場合
if hit.evalue < 0.0001
# その evalue と、名前、オーバーラップ領域を表示
print "#{hit.query_id} : evalue #{hit.evalue}\t#{hit.target_id} at "
p hit.lap_at
end
end
end
ここで factory は繰り返し FASTA を実行するために、あらかじめ作っておく実行環境です。
上記のスクリプトを search.rb とすると、問い合わせ配列とデータベース配列のファイル名を引数にして、以下のように実行します。
% ruby search.rb query.pep target.pep > search.out
FASTA コマンドにオプションを与えたい場合、3番目の引数に FASTA のコマンドラインオプションを書いて渡します。ただし、ktup 値だけはメソッドを使って指定することになっています。たとえば ktup 値を 1 にして、トップ 10 位以内のヒットを得る場合のオプションは、以下のようになります。
factory = Bio::Fasta.local('fasta34', 'target.pep', '-b 10')
factory.ktup = 1
Bio::Fasta#query メソッドなどの返り値は Bio::Fasta::Report オブジェクトです。この Report オブジェクトから、様々なメソッドで FASTA の出力結果のほぼ全てを自由に取り出せるようになっています。たとえば、ヒットに関するスコアなどの主な情報は、
report.each do |hit|
puts hit.evalue # E-value
puts hit.sw # Smith-Waterman スコア (*)
puts hit.identity # % identity
puts hit.overlap # オーバーラップしている領域の長さ
puts hit.query_id # 問い合わせ配列の ID
puts hit.query_def # 問い合わせ配列のコメント
puts hit.query_len # 問い合わせ配列の長さ
puts hit.query_seq # 問い合わせ配列
puts hit.target_id # ヒットした配列の ID
puts hit.target_def # ヒットした配列のコメント
puts hit.target_len # ヒットした配列の長さ
puts hit.target_seq # ヒットした配列
puts hit.query_start # 相同領域の問い合わせ配列での開始残基位置
puts hit.query_end # 相同領域の問い合わせ配列での終了残基位置
puts hit.target_start # 相同領域のターゲット配列での開始残基位置
puts hit.target_end # 相同領域のターゲット配列での終了残基位置
puts hit.lap_at # 上記4位置の数値の配列
end
などのメソッドで呼び出せます。これらのメソッドの多くは後で説明する Bio::Blast::Report クラスと共通にしてあります。上記以外のメソッドや FASTA 特有の値を取り出すメソッドが必要な場合は、Bio::Fasta::Report クラスのドキュメントを参照してください。
もし、パースする前の手を加えていない fasta コマンドの実行結果が必要な場合には、
report = factory.query(entry)
puts factory.output
のように、query メソッドを実行した後で factory オブジェクトの output メソッドを使って取り出すことができます。
今のところ GenomeNet (fasta.genome.jp) での検索のみサポートしています。リモートの場合は使用可能な検索対象データベースが決まっていますが、それ以外の点については Bio::Fasta.remote と Bio::Fasta.local は同じように使うことができます。
GenomeNet で使用可能な検索対象データベース:
- アミノ酸配列データベース
- nr-aa, genes, vgenes.pep, swissprot, swissprot-upd, pir, prf, pdbstr
- 塩基配列データベース
- nr-nt, genbank-nonst, gbnonst-upd, dbest, dbgss, htgs, dbsts, embl-nonst, embnonst-upd, genes-nt, genome, vgenes.nuc
まず、この中から検索したいデータベースを選択します。問い合わせ配列の種類と検索するデータベースの種類によってプログラムは決まります。
- 問い合わせ配列がアミノ酸のとき
- 対象データベースがアミノ酸配列データベースの場合、program は 'fasta'
- 対象データベースが核酸配列データベースの場合、program は 'tfasta'
- 問い合わせ配列が核酸配列のとき
- 対象データベースが核酸配列データベースの場合、program は 'fasta'
- (対象データベースがアミノ酸配列データベースの場合は検索不能?)
プログラムとデータベースの組み合せが決まったら
program = 'fasta'
database = 'genes'
factory = Bio::Fasta.remote(program, database)
としてファクトリーを作り、ローカルの場合と同じように factory.query などのメソッドで検索を実行します。
BLAST もローカルと GenomeNet (blast.genome.jp) での検索をサポートしています。できるだけ Bio::Fasta と API を共通にしていますので、上記の例を Bio::Blast と書き換えただけでも大丈夫な場合が多いです。
たとえば、先の f_search.rb は
# BLAST を実行する環境オブジェクトを作る
factory = Bio::Blast.local('blastp', ARGV.pop)
と変更するだけで同じように実行できます。
同様に、GenomeNet を使用してBLASTを行う場合には Bio::Blast.remote を使います。この場合、programの指定内容が FASTA と異なります。
- 問い合わせ配列がアミノ酸のとき
- 対象データベースがアミノ酸配列データベースの場合、program は 'blastp'
- 対象データベースが核酸配列データベースの場合、program は 'tblastn'
- 問い合わせ配列が塩基配列のとき
- 対象データベースがアミノ酸配列データベースの場合、program は 'blastx'
- 対象データベースが塩基配列データベースの場合、program は 'blastn'
- (問い合わせ・データベース共に6フレーム翻訳を行う場合は 'tblastx')
をそれぞれ指定します。
ところで、BLAST では "-m 7" オプションによる XML 出力フォーマッットの方が得られる情報が豊富なため、Bio::Blast は Ruby 用の XML ライブラリである XMLParser または REXML が使用可能な場合は、XML 出力を利用します。両方使用可能な場合、XMLParser のほうが高速なので優先的に使用されます。なお、Ruby 1.8.0 以降では REXML は Ruby 本体に標準添付されています。もし XML ライブラリがインストールされていない場合は "-m 8" のタブ区切りの出力形式を扱うようにしています。しかし、このフォーマットでは得られるデータが限られるので、"-m 7" の XML 形式の出力を使うことをお勧めします。
すでに見たように Bio::Fasta::Report と Bio::Blast::Report の Hit オブジェクトはいくつか共通のメソッドを持っています。BLAST 固有のメソッドで良く使いそうなものには bit_score や midline などがあります。
report.each do |hit|
puts hit.bit_score # bit スコア (*)
puts hit.query_seq # 問い合わせ配列
puts hit.midline # アライメントの midline 文字列 (*)
puts hit.target_seq # ヒットした配列
puts hit.evalue # E-value
puts hit.identity # % identity
puts hit.overlap # オーバーラップしている領域の長さ
puts hit.query_id # 問い合わせ配列の ID
puts hit.query_def # 問い合わせ配列のコメント
puts hit.query_len # 問い合わせ配列の長さ
puts hit.target_id # ヒットした配列の ID
puts hit.target_def # ヒットした配列のコメント
puts hit.target_len # ヒットした配列の長さ
puts hit.query_start # 相同領域の問い合わせ配列での開始残基位置
puts hit.query_end # 相同領域の問い合わせ配列での終了残基位置
puts hit.target_start # 相同領域のターゲット配列での開始残基位置
puts hit.target_end # 相同領域のターゲット配列での終了残基位置
puts hit.lap_at # 上記4位置の数値の配列
end
FASTAとのAPI共通化のためと簡便のため、スコアなどいくつかの情報は1番目の Hsp (High-scoring segment pair) の値をHitで返すようにしています。
Bio::Blast::Report オブジェクトは、以下に示すような、BLASTの結果出力のデータ構造をそのまま反映した階層的なデータ構造を持っています。具体的には
- Bio::Blast::Report オブジェクトの @iteratinos に
- Bio::Blast::Report::Iteration オブジェクトの Array が入っており Bio::Blast::Report::Iteration オブジェクトの @hits に
- Bio::Blast::Report::Hits オブジェクトの Array が入っており Bio::Blast::Report::Hits オブジェクトの @hsps に
- Bio::Blast::Report::Hsp オブジェクトの Array が入っている
- Bio::Blast::Report::Hits オブジェクトの Array が入っており Bio::Blast::Report::Hits オブジェクトの @hsps に
- Bio::Blast::Report::Iteration オブジェクトの Array が入っており Bio::Blast::Report::Iteration オブジェクトの @hits に
という階層構造になっており、それぞれが内部の値を取り出すためのメソッドを持っています。これらのメソッドの詳細や、BLAST 実行の統計情報などの値が必要な場合には、 bio/appl/blast/*.rb 内のドキュメントやテストコードを参照してください。
BLAST を実行した結果ファイルがすでに保存してあって、これを解析したい場合には(Bio::Blast オブジェクトを作らずに) Bio::Blast::Report オブジェクトを作りたい、ということになります。これには Bio::Blast.reports メソッドを使います。対応しているのは デフォルト出力フォーマット("-m 0") または "-m 7" オプションの XML フォーマット出力です。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
# BLAST出力を順にパースして Bio::Blast::Report オブジェクトを返す
Bio::Blast.reports(ARGF) do |report|
puts "Hits for " + report.query_def + " against " + report.db
report.each do |hit|
print hit.target_id, "\t", hit.evalue, "\n" if hit.evalue < 0.001
end
end
のようなスクリプト hits_under_0.001.rb を書いて、
% ./hits_under_0.001.rb *.xml
などと実行すれば、引数に与えた BLAST の結果ファイル *.xml を順番に処理できます。
Blast のバージョンや OS などによって出力される XML の形式が異なる可能性があり、時々 XML のパーザがうまく使えないことがあるようです。その場合は Blast 2.2.5 以降のバージョンをインストールするか -D や -m などのオプションの組み合せを変えて試してみてください。
注: このセクションは上級ユーザ向けです。可能であれば SOAP などによるウェブサービスを利用する方がよいでしょう。
Blast 検索は NCBI をはじめ様々なサイトでサービスされていますが、今のところ BioRuby では GenomeNet 以外には対応していません。これらのサイトは、
- CGI を呼び出す(コマンドラインオプションはそのサイト用に処理する)
- -m 8 など BioRuby がパーザを持っている出力フォーマットで blast の出力を取り出す
ことさえできれば、query を受け取って検索結果を Bio::Blast::Report.new に渡すようなメソッドを定義するだけで使えるようになります。具体的には、このメソッドを「exec_サイト名」のような名前で Bio::Blast の private メソッドとして登録すると、4番目の引数に「サイト名」を指定して
factory = Bio::Blast.remote(program, db, option, 'サイト名')
のように呼び出せるようになっています。完成したら BioRuby プロジェクトまで送ってもらえれば取り込ませて頂きます。
次は、NCBI の文献データベース PubMed を検索して引用文献リストを作成する例です。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
ARGV.each do |id|
entry = Bio::PubMed.query(id) # PubMed を取得するクラスメソッド
medline = Bio::MEDLINE.new(entry) # Bio::MEDLINE オブジェクト
reference = medline.reference # Bio::Reference オブジェクト
puts reference.bibtex # BibTeX フォーマットで出力
end
このスクリプトを pmfetch.rb など好きな名前で保存し、
% ./pmfetch.rb 11024183 10592278 10592173
など引用したい論文の PubMed ID (PMID) を引数に並べると NCBI にアクセスして MEDLINE フォーマットをパースし BibTeX フォーマットに変換して出力してくれるはずです。
他に、キーワードで検索する機能もあります。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
# コマンドラインで与えたキーワードのリストを1つの文字列にする
keywords = ARGV.join(' ')
# PubMed をキーワードで検索
entries = Bio::PubMed.search(keywords)
entries.each do |entry|
medline = Bio::MEDLINE.new(entry) # Bio::MEDLINE オブジェクト
reference = medline.reference # Bio::Reference オブジェクト
puts reference.bibtex # BibTeX フォーマットで出力
end
このスクリプトを pmsearch.rb など好きな名前で保存し
% ./pmsearch.rb genome bioinformatics
など検索したいキーワードを引数に並べて実行すると、PubMed をキーワード検索してヒットした論文のリストを BibTeX フォーマットで出力します。
最近では、NCBI は E-Utils というウェブアプリケーションを使うことが推奨されているので、今後は Bio::PubMed.esearch メソッドおよび Bio::PubMed.efetch メソッドを使う方が良いでしょう。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
keywords = ARGV.join(' ')
options = {
'maxdate' => '2003/05/31',
'retmax' => 1000,
}
entries = Bio::PubMed.esearch(keywords, options)
Bio::PubMed.efetch(entries).each do |entry|
medline = Bio::MEDLINE.new(entry)
reference = medline.reference
puts reference.bibtex
end
このスクリプトでは、上記の pmsearch.rb とほぼ同じように動きます。さらに、 NCBI E-Utils を活用することにより、検索対象の日付や最大ヒット件数などを指定できるようになっているので、より高機能です。オプションに与えられる引数については E-Utils のヘルプページ を参照してください。
ちなみに、ここでは bibtex メソッドで BibTeX フォーマットに変換していますが、後述のように bibitem メソッドも使える他、(強調やイタリックなど文字の修飾はできませんが)nature メソッドや nar など、いくつかの雑誌のフォーマットにも対応しています。
上記の例で集めた BibTeX フォーマットのリストを TeX で使う方法を簡単にまとめておきます。引用しそうな文献を
% ./pmfetch.rb 10592173 >> genoinfo.bib
% ./pmsearch.rb genome bioinformatics >> genoinfo.bib
などとして genoinfo.bib ファイルに集めて保存しておき、
\documentclass{jarticle}
\begin{document}
\bibliographystyle{plain}
ほにゃらら KEGG データベース~\cite{PMID:10592173}はふがほげである。
\bibliography{genoinfo}
\end{document}
というファイル hoge.tex を書いて、
% platex hoge
% bibtex hoge # → genoinfo.bib の処理
% platex hoge # → 文献リストの作成
% platex hoge # → 文献番号
とすると無事 hoge.dvi ができあがります。
文献用に別の .bib ファイルを作りたくない場合は Reference#bibitem メソッドの出力を使います。上記の pmfetch.rb や pmsearch.rb の
puts reference.bibtex
の行を
puts reference.bibitem
に書き換えるなどして、出力結果を
\documentclass{jarticle}
\begin{document}
ほにゃらら KEGG データベース~\cite{PMID:10592173}はふがほげである。
\begin{thebibliography}{00}
\bibitem{PMID:10592173}
Kanehisa, M., Goto, S.
KEGG: kyoto encyclopedia of genes and genomes.,
{\em Nucleic Acids Res}, 28(1):27--30, 2000.
\end{thebibliography}
\end{document}
のように \begin{thebibliography} で囲みます。これを hoge.tex とすると
% platex hoge # → 文献リストの作成
% platex hoge # → 文献番号
と2回処理すればできあがりです。
OBDA (Open Bio Database Access) とは、Open Bioinformatics Foundation によって制定された、配列データベースへの共通アクセス方法です。これは、 2002 年の1月と2月に Arizona と Cape Town にて開催された BioHackathon において、BioPerl, BioJava, BioPython, BioRuby などの各プロジェクトのメンバーが参加して作成されました。
- BioRegistry (Directory)
- データベース毎に配列をどこにどのように取りに行くかを指定する仕組み
- BioFlat
- フラットファイルの 2 分木または BDB を使ったインデックス作成
- BioFetch
- HTTP 経由でデータベースからエントリを取得するサーバとクライアント
- BioSQL
- MySQL や PostgreSQL などの関係データベースに配列データを格納するための schema と、エントリを取り出すためのメソッド
詳細は http://obda.open-bio.org/ を参照してください。それぞれの仕様書は cvs.open-bio.org の CVSレポジトリに置いてあります。または、http://cvs.open-bio.org/cgi-bin/viewcvs/viewcvs.cgi/obda-specs/?cvsroot=obf-common から参照できます。
BioRegistryとは、設定ファイルによって各データベースのエントリ取得方法を指定することにより、どんな方法を使っているかをほとんど意識せずデータを取得することを可能とするための仕組みです。設定ファイルの優先順位は
- (メソッドのパラメータで)指定したファイル
- ~/.bioinformatics/seqdatabase.ini
- /etc/bioinformatics/seqdatabase.ini
- http://www.open-bio.org/registry/seqdatabase.ini
最後の open-bio.org の設定は、ローカルな設定ファイルが見つからない場合にだけ参照します。
BioRuby の現在の実装では、すべてのローカルな設定ファイルを読み込み、同じ名前の設定が複数存在した場合は、最初に見つかった設定だけが使用されます。これを利用すると、たとえば、システム管理者が /etc/bioinformatics/ に置いた設定のうち個人的に変更したいものだけ ~/.bioinformatics/ で上書きすることができます。サンプルの seqdatabase.ini ファイルが bioruby のソースに含まれていますので参照してください。
設定ファイルの中身は stanza フォーマットと呼ばれる書式で記述します。
[データベース名]
protocol=プロトコル名
location=サーバ名
このようなエントリを各データベースについて記述することになります。データベース名は、自分が使用するためのラベルなので分かりやすいものをつければ良く、実際のデータベースの名前と異なっていても構わないようです。同じ名前のデータベースが複数あるときは最初に書かれているものから順に接続を試すように仕様書では提案されていますが、今のところ BioRuby ではそれには対応していません。
また、プロトコルの種類によっては location 以外にも(MySQL のユーザ名など)追加のオプションを記述する必要があります。現在のところ、仕様書で規定されている protocol としては以下のものがあります。
- index-flat
- index-berkeleydb
- biofetch
- biosql
- bsane-corba
- xembl
今のところ BioRuby で使用可能なのは index-flat, index-berkleydb, biofetch と biosql だけです。また、BioRegistryや各プロトコルの仕様は変更されることがありますが、BioRubyはそれに追従できていないかもしれません。
BioRegistry を使うには、まず Bio::Registryオブジェクトを作成します。すると、設定ファイルが読み込まれます。
reg = Bio::Registry.new
# 設定ファイルに書いたデータベース名でサーバへ接続
serv = reg.get_database('genbank')
# ID を指定してエントリを取得
entry = serv.get_by_id('AA2CG')
ここで serv は設定ファイルの [genbank] の欄で指定した protocol プロトコルに対応するサーバオブジェクトで、Bio::SQL や Bio::Fetch などのインスタンスが返っているはずです(データベース名が見つからなかった場合は nil)。
あとは OBDA 共通のエントリ取得メソッド get_by_id を呼んだり、サーバオブジェクト毎に固有のメソッドを呼ぶことになりますので、以下の BioFetch や BioSQL の解説を参照してください。
BioFlat はフラットファイルに対してインデックスを作成し、エントリを高速に取り出す仕組みです。インデックスの種類は、RUbyの拡張ライブラリに依存しない index-flat と Berkeley DB (bdb) を使った index-berkeleydb の2種類が存在します。なお、index-berkeleydb を使用するには、BDB という Ruby の拡張ライブラリを別途インストールする必要があります。インデックスの作成には bioruby パッケージに付属する br_bioflat.rb コマンドを使って、
% br_bioflat.rb --makeindex データベース名 [--format クラス名] ファイル名
のようにします。BioRubyはデータフォーマットの自動認識機能を搭載しているので --format オプションは省略可能ですが、万一うまく認識しなかった場合は BioRuby の各データベースのクラス名を指定してください。検索は、
% bioflat データベース名 エントリID
とします。具体的に GenBank の gbbct*.seq ファイルにインデックスを作成して検索する場合、
% bioflat --makeindex my_bctdb --format GenBank gbbct*.seq
% bioflat my_bctdb A16STM262
のような感じになります。
Ruby の bdb 拡張モジュール(詳細は http://raa.ruby-lang.org/project/bdb/ 参照) がインストールされている場合は Berkeley DB を利用してインデックスを作成することができます。この場合、
% bioflat --makeindex-bdb データベース名 [--format クラス名] ファイル名
のように "--makeindex" のかわりに "--makeindex-bdb" を指定します。
BioFetch は CGI を経由してサーバからデータベースのエントリを取得する仕様で、サーバが受け取る CGI のオプション名、エラーコードなどが決められています。クライアントは HTTP を使ってデータベース、ID、フォーマットなどを指定し、エントリを取得します。
BioRuby プロジェクトでは GenomeNet の DBGET システムをバックエンドとした BioFetch サーバを実装しており、bioruby.org で運用しています。このサーバのソースコードは BioRuby の sample/ ディレクトリに入っています。現在のところ BioFetch サーバはこの bioruby.org のものと EBI の二か所しかありません。
BioFetch を使ってエントリを取得するには、いくつかの方法があります。
-
ウェブブラウザから検索する方法(以下のページを開く)
http://bioruby.org/cgi-bin/biofetch.rb
-
BioRuby付属の br_biofetch.rb コマンドを用いる方法
% br_biofetch.rb db_name entry_id
-
スクリプトの中から Bio::Fetch クラスを直接使う方法
serv = Bio::Fetch.new(server_url) entry = serv.fetch(db_name, entry_id)
-
スクリプトの中で BioRegistry 経由で Bio::Fetch クラスを間接的に使う方法
reg = Bio::Registry.new serv = reg.get_database('genbank') entry = serv.get_by_id('AA2CG')
もし (4) を使いたい場合は seqdatabase.ini で
[genbank]
protocol=biofetch
location=http://bioruby.org/cgi-bin/biofetch.rb
biodbname=genbank
などと指定しておく必要があります。
次のプログラムは、BioFetch を使って KEGG の GENES データベースから古細菌 Halobacterium のバクテリアロドプシン遺伝子 (VNG1467G) を取ってきて、同じようにアミノ酸指標データベースである AAindex から取得したαヘリックスの指標 (BURA740101) を使って、幅 15 残基のウィンドウサーチをする例です。
#!/usr/bin/env ruby
require 'bio'
entry = Bio::Fetch.query('hal', 'VNG1467G')
aaseq = Bio::KEGG::GENES.new(entry).aaseq
entry = Bio::Fetch.query('aax1', 'BURA740101')
helix = Bio::AAindex1.new(entry).index
position = 1
win_size = 15
aaseq.window_search(win_size) do |subseq|
score = subseq.total(helix)
puts [ position, score ].join("\t")
position += 1
end
ここで使っているクラスメソッド Bio::Fetch.query は暗黙に bioruby.org の BioFetch サーバを使う専用のショートカットです。(このサーバは内部的にはゲノムネットからデータを取得しています。KEGG/GENES データベースの hal や AAindex データベース aax1 のエントリは、他の BioFetch サーバでは取得できないこともあって、あえて query メソッドを使っています。)
to be written...
BioRuby のパッケージには samples/ ディレクトリ以下にいくつかのサンプルプログラムが含まれています。古いものも混じっていますし、量もとても十分とは言えないので、実用的で面白いサンプルの提供は歓迎です。
to be written...
他のチュートリアル的なドキュメントとしては、BioRuby Wikiに置いてある BioRuby in Anger があります。
-
(※1) BioRuby 1.2.1 以前のバージョンでは、setup.rb のかわりに install.rb を使用します。また、以下のように3段階を踏む必要があります。
% ruby install.rb config % ruby install.rb setup # ruby install.rb install
-
(※2) BioRuby 1.0.0 以前のバージョンでは、getseq, getent, getobj の各コマンドのかわりに、seq, ent, obj の各コマンドを使用してください。
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(※3) BioRuby 0.7.1 以前のバージョンでは、Bio::Sequence::NA クラスか、 Bio::sequence::AA クラスのどちらかのオブジェクトになります。配列がどちらのクラスに属するかは Ruby の class メソッドを用いて
bioruby> p cdc2.class Bio::Sequence::AA bioruby> p psaB.class Bio::Sequence::NA
のように調べることができます。自動判定が間違っている場合などには to_naseq, to_aaseq メソッドで強制的に変換できます。
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(※4) seq メソッドは、読み込んだデータの種類によっては、塩基・アミノ酸のどちらにも当てはまらない配列のための Bio::Sequence::Generic クラスや String クラスのオブジェクトを返す場合があるかもしれません。
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(※5) NCBI, EBI, TogoWS が特別な設定無しに getseq, getent, getobj コマンドから利用可能となったのは BioRuby 1.3.0 以降です。